木造2階建て、半地下の駐車場部分はRC造。
1階は全てバレエスタジオで、2階が居住部分です。
8m×12mの広いバレエスタジオを確保するのに、鉄骨ではなく、大断面の集成材という木を使って、特殊な構造にしてあります。
駐車場を車8台分確保するために、基礎全体を持ち上げ、3階建てにならないように半地下状態にして設計してあります。
あくまでも明るく、広く、清潔に。しかも保護者のお母様方が、子供達のお稽古を見るのに、見やすいように、というコンセプトで設計したホールです。玄関ドアはオリジナルで設計してガラス面を広く取り、明るくしました。でも中は覗き見が出来ないように柔らかくスモークにしてあります。
教室でのミニ発表会では登場口になります。カーテン、手摺などで工夫して、色々に使えるようにしました。
2階の住居部分は天井の材料を見せ、白い床と対比させながら、木の建具や家具などとあわせて木の質感を見せるようにしました。
バレエスタジオの天井高さは3mありますが、2階の高さは抑えて、外からは居住部分があまり見えないような工夫をしてあります。
居間食堂は、あえて北側、つまり広く交通量の多い道路側にして、寝室を南側の静かな面に配置しました。
でも、居間食堂は決して暗くありません。ベランダの手摺を少し高めで、しかも真っ白にしたので、反射光が入ってきてかなり明るくなるようにしました。北側にあるとは、だれも気が付かないでしょう。
バレエスタジオは床の柔軟性が重要です。硬すぎると膝を痛め、柔らかすぎるとバウンドしてしまいます。
今回の設計では複数のメーカーのスポーツ用システムフロアーを検討し、その中から良さそうな物を選び、メーカーに協力してもらって1坪程のモックアップを制作して堅さを確認しました。
例えば、エアロビクス用などの床だと、バレエには柔らかすぎ、ジャンプ時に違和感があります。また、通常の床のゴムで防音用の素材がありますが、それでは硬すぎます。今回の選定は、メーカーにお願いして、複数のゴムを用意してもらいました。
また、床の仕上げ材も重要です。適度に滑りやすく滑りすぎないで、しかも強靱で色が明るめ。バレエ専用という床材も試しましたが、滑りすぎでした。これも1坪程のサンプルを多数取り寄せ、実際に試してみてから決めました。
天井高さ3mという広く高い空間、快適な空調と臨場感のある音響効果。バレエスタジオの設計は、通常のスポーツスタジオとは違い、かなり神経の細やかさと経験が必要です。
珍しい、マンションの建替えです。
ある設計事務所が受注したプロジェクトですが、手が足りないので、アトリエ・アンド・アイと東海大学が協力して、共同設計という形で携わりました。
都内に建てられた、RC造、地下1階、地上5階建て、75世帯の分譲マンションです。
56世帯の築50年の団地型マンションを解体し、75世帯の大きいマンションで計画し、余剰部分の住戸を販売することで建設費を捻出しています。
マンションの設計コンセプトは、住民の意思による建替えプロジェクト。50年以上に渡る理事会のコミュニティーは強力で、建替えの意志決定から完成までに、100回以上の理事会を開き、意志決定してきました。
そんなコミュニティーを維持して欲しいと、広い中庭を設けています。
完成した後も、毎年正月には餅つき会、夏には屋上で夕涼みのビアガーデンを開いています。
良好なコミュニティーは、完成後も続いています。
建替え後も住み続けた49世帯の地権者の住戸は、全てフリープランとして設計し、一人一人、個別に対応して設計してあります。
もちろん打ち合わせは、全戸、個別打ち合わせです。合計で何十回の打ち合わせになったかは分かりませんが、全戸丁寧に対応しました。
ですから、ちょっと変わった設計もたくさんあります。普通のマンションでは有り得ない、オリジナルの間取りです。
Hマンション建替えの中の一室です。
独身女性の住戸ですが、週刊ダイアモンド誌に掲載されたものです。
完全なワンルームで、間仕切り壁は水回りしか存在しません。
浴室もガラス張りで、庭付きの1階にあるため、浴槽から、遠く庭を眺めることができます。
マンションでガラス張りの浴室にするのは、新築では不可能に近いことです。
理由は、施工するゼネコンが水漏れなどの不具合を恐れるからです。
リフォームでは時々見かけますが、かなり粘り強く交渉して、ユニットバスメーカーの個別対応の強力もあって、1階だからという事で成立しました。 入浴気分は最高で、大満足だそうです。
築26年のバブル初期に建設されたマンションの、既存の居間食堂です。右奥が独立した台所です。
一応3LDKですが、66㎡ですから、居間食堂はかなり狭いです。
3室を確保するために、全体に小さく仕切られているため、内部は狭くて使いにくい間取りです。
また床材も、当時流行した暗い色のフローリングで、感じも暗いです。
一度全解体をし、間取りもほとんど変更しました。
全体的に間仕切りを無くし、台所との境も全て撤去し、広々として風通しの良い空間としました。
床材も明るいコルクタイルで全て統一し、空間の一体感を強調しました。
台所への間仕切りやカウンターを無くし、台所から食堂にかけて、連続した大きなカウンターを計画しました。もちろん、キッチンはステンレスカウンターで、食堂は木のカウンターです。下は全て収納。
この連続した一連のカウンターが、部屋を広く大きく見せ、しかも使い方が自由で、ストレスがまったくありません。
既存の、南側の個室6畳です。
そこと和室が続きで、和室には引き違い戸が付いていました。
和室は日中でも暗く、寝室としてしか使えない状態でした。
居間食堂との境の壁を撤去し、ハンガーレールの引戸を付けました。
奥の和室は洋室に変更し、建具は大きな1枚引戸にして、開口を大きくし、明るい部屋になるようにしてあります。
写真にある奥の洋室は、元の和室だったところです。引戸を大きくし、一体感を作りました。この部屋の奥は更に引戸で何度に通じ、その奥の北側の洋室まで繋がっています。そのため、廊下を通らずに何度経由で行き来できます。
風通しは最高で、エアコンも1台で北側の部屋まで十分に冷えています。
その他の写真を下に並べました。居間食堂から台所にかけては、キッチンと高さを揃えたカウンター収納が延びていて、壁も木地仕上げで統一しました。これも、部屋を広く使える工夫です。
最後に、この現場を担当して下さった、栄港建設の工事主任さん、塚原さんをご紹介します。ベテランの方で、色々なアドバイスを頂きながら、私の面倒な注文をこなしてくれました。ありがとうございます。
若松区中川町の活動に一区切りをつけて、新たに門司港での活動を開始しました。
門司港はすでに観光地として有名で、地域活性化と言っても今更何をするのか?と言う疑問もあると思います。
一つは、北九州市が進める観光地としての外国人観光客の誘致活動に協力して、和服と袴をレンタルして着付けを行い、門司港レトロ地区としてのレトロ感を発信するボランティア活動です。
有料のレンタルですが、春と秋の土日に、学生が駐在して着付けを手伝っています。
もう一つは、門司港旧市街地の再活性化活動です。
門司港レトロ地区は門司港駅から海岸沿いに向かって、新しく北九州市が大金を投じて作り上げた人工の観光地です。そこはそれなりに繁栄していますが、一方で元からの旧市街地の商店街などは客足が途絶え、店が存続できない瀕死の状態となってしまいました。
その旧市街地に力を投じて、なんとか活性化に協力できないかと考えています。
何をするか・・・はまだ確定していません。
とりあえずは、旧商店街や市場を探索して、住民の声に耳を傾けながら、自分たちの力でできることを探しています。
若松でのプロジェクトが2年目を終えました。
空き家を再生して地域の活性化に繋げようという活動ですが、今年度は具体的なリノベーションが実施され、中川町に人が集まり始めて賑やかになってきています。新聞やテレビのメディアにかなり取り上げられ、若松で何かやっているという印象を、広く認知してもらった感じがあります。
九州女子大学としては、今年度は、空き家を一軒学生5人の手でリノベーションし、学生が一人実際に住むプロジェクトを完成させることができました。空き家はもちろん築50年以上のボロ家です。外装は学生の力では無理なので、内装の床、壁、天井、キッチン、風呂などの仕上げを自分たちの手で改装し、見違えるほど奇麗にして、女子大生が住めるポップな内装の建物に変身させています。
「女子大生が空き家を改装して住む」というプロジェクトはマスコミの関心を呼び、テレビの特集まで組んでもらい、若松が更に注目を集めてくれたことと思います。
来年度もこの活動は続けます。
九州女子大学、人間生活学科の住居専攻の学生は、更に地域に飛び出そうと思っています。
同時並行で企画していた、若松食べ歩きマップも完成しました。16件のレストランや食材店を取材し、メニューや特徴などを日本語、英語、韓国語、中国語で説明した冊子です。
店の選択は、全て学生が行なっています。美味しそうだけど高そうとか、見た目は奇麗だったけど味がイマイチなどの店は排除されています。
逆に、絶対オススメで気合いを入れて記事を書いて準備していたのに、発行直前に店を閉めてしまった、という例もありました。
食べあるきマップ(EATING TOUR)は、店からは掲載料などは一切もらっていません。作ったのは学生、取材費用は研究費、最後の印刷は印刷屋で作成しています。あくまでも、若松の地域活性化活動の一環で、インバウンドを見込んで外国人向けに作成してみたものです。その為に、留学生等の力を借りて、4カ国語としています。
既に配布も始めています。
お店からは評判でした。でも、外人客を敬遠する反応もありました。言葉の問題です。
留学生に配布したら、イスラム圏の学生のほとんどがベジアリアンかハラールで肉もスープを食べられませんでした。
やってみて初めて分かった事がたくさんあります。
今後、店舗を増やしたりベジタリアン対策を盛込もうと考えています。来年度中には、空港や駅のフリーペーパーとして、九女作のマップが置かれる日が来るように頑張りたいと思います。
北九州市産業経済局の後援で、若松区中川町の地域再興プロジェクトがキックオフしました。人口の減る一方の中川町の多くの空家を活用し、人を集める工夫は出来ないものか、という活動です。
九州女子大学人間生活学科では、前田ゼミによる建築的提案、地域連携による町起こし企画への応援・参加、食分野の学生らによる若松ぺったん焼きの新メニュー考案などを、これから継続して行なう予定です。
九女の女子力は、町起こしの起爆剤になり得るか、が問われる重要な企画でもあり、これからが楽しみです。