住宅の話

町屋の平面図と坪庭の写真
町屋の平面図と坪庭の写真

郊外に住んでいる人なら経験があると思います。真夏の暑い時間、自転車で走っていて、畑や原っぱなどにさしかかると、スーっと涼しさを感じることです。アスファルトの舗装道路で住宅街やビル街を走っているときは、焼け付くように暑いですが、周囲が原っぱになると一気に気温が下がります。

ヒートアイランド現象、と言いますが、自転車で走り回っていると、そんな実感があります。

 

同じ事が住宅の庭でも言えます。土に覆われた庭は、狭くてもそこだけ気温が下がります。その下がった空気を巧みに室内に取り入れる工夫をした家が、京都や多くの城下町にある町屋の作りです。町屋というのは、奥に細長いので、必ず真ん中付近に「坪庭」と呼ばれる小さな庭を作ります。主な用途は明り取りですが、そこの冷えた空気を利用して、細長い建物に風を通すのが役目でもあります。

 

最近の都会の住宅には、土の庭が全くない家が多数あります。空地のほとんどが駐車スペースとアプローチに使われているため、土の部分が残らないのが実情です。更に、土の庭は、草むしりなどの手入れが面倒、と言う人もいます。確かにその通りで、折角植えた花も、雑草に覆われてしまいます。ならば、石で覆ってプランターでも置く、という発想はあると思います。

でも、これも狭い範囲でのヒートアイランド現象になってしまいます。

 

庭と庭木の手入れはご主人の仕事、花を植えるのは奥さんの仕事。

というのが一般論の様ですが、そのご主人が動かない、というのがおおかたのご家庭の事情のようで、庭を巡って夫婦でのいさかいになっているようです。住宅の設計をしていても、よくそんな場面になります。

 

でも、庭を愛でるは古くからの日本人の心です。小さくても、小宇宙、というのが禅とお茶の境地です。

何とか、土の庭を維持したいものです。