建築雑談

違法建築はやめましょうの広告  何かの役に立つのでしょうか
違法建築はやめましょうの広告  何かの役に立つのでしょうか

長いこと設計の仕事をしていると、色々な困った注文にも出くわします。それでも大抵のことは何とかこなしますが、違法建築だけは厄介です。別に、正義感の固まり、と言うわけではないので、第三者に迷惑のかからない、住戸内部だけの問題であれば、多少の融通は利かせています。なんて、本当は大きな声では言えないですが。

 

例えば、

田園調布である女優の家を設計したことがあります。残念ながら、その違法の問題で成約には至りませんでしたが、困った注文は延面積の問題でした。何しろ、洋服の量が半端な量ではないのです。ウォークインクローゼットを作って、そこに衣類を収納しようとしたのですが、ハンガーに掛ける洋服の量だけで、12帖分ぐらいの部屋を使ってしまうほどでした。そして、残念だったのが敷地が狭かったのです。独身の女優さんでしたが、他の部屋の要望を入れていくと、どうしても納まりません。そこで彼女は、大きな屋根裏部屋を作って、そこを寝室にしてくれ、つまり、隠れ3階にしてくれ、と要求してきたのです。

確かに、屋根裏部屋を使った2階建てはありますが、当時は、天井高さが1.5m以下、面積は2階部分の1/8以下という、厳しい条件が付いていました。ですから、とても大きな屋根裏部屋は期待できません。

リスクが大きすぎたので、丁寧に説明して、お断りしました。噂では、どこかの工務店で要望通り建てたそうです。

 

東京都下の国立市の周辺には、建ぺい率が30%、容積率が60%という地域があります。普通は建ぺい率は50%で、容積率は100%ですので、それから見るとその厳しさが分かるかと思います。もちろん、広々とした豊かな街並みを確保しようという行政側の意向によるものですが、そこに住む住民には、必ずしも恵まれた面積の土地を持っているわけでもなく、ビバリーヒルズに住んでいるつもりでもない方々が大勢います。そこで当然、違法建築の相談が出てきます。

役所の検査後に増築をするとか、吹抜を作っておいて後で床を作るとか、色々な手を考えます。正直なところ、施主には同情してしまいます。決して広くない40坪程度の土地に、延床が24坪の住宅しか建てられないのですから。一般的な住宅地なら、40坪か、悪くても32坪は建てられます。24坪は、あまりにもかわいそうです。

ですが、リスクが大きすぎます。隣近所、みんなが同じ思いで小さな家に住んで我慢しているので、一人だけインチキはできません。お断りするしかありません。

 

日本の建築基準法は、世界的に見ても決して厳しすぎる訳ではありません。先進国としては当然のレベルだと思います。ただ、バランスが悪いと思います。ディテールにこだわりすぎているし、運用が人によってバラバラで、制限の必要もない余計なお世話もかなりあります。

広々とした田園地帯で、のびのびと設計したいと、いつも思うのですが、なかなか叶えられません。