住宅の話

ただの雨樋ですが、市販にないデザインだったりして部品が手に入らない事があります
ただの雨樋ですが、市販にないデザインだったりして部品が手に入らない事があります

かつて住宅メーカーに勤めていたときの事です。庇の金物が傷んでいて、そこが台風で壊れたので、金物のメーカーを教えて欲しいという電話を受けたことがありました。何てことのない問い合わせです。当然、建った年を聞き、その時に使っていたメーカーを調べれば済むことです。

しかしです。住宅メーカー、それも大手会社になるとそう簡単な話ではありません。「すいませんが、庇の金物はオリジナルのデザインで市販はされていません。修理は弊社のリフォーム部門でお請けします」というのが答えになります。

「えっ、他の事と一緒に知り合いの工務店に頼んであるんだけど。それにおたくに頼むと、高いし・・・・」

 

一般市販品を使い、互換性を持った設計方法をオープンシステムと言います。通常の建設はほとんどがこのオープンシステムで建てられています。ですが、プレハブ会社や大手の注文住宅会社になると、独自にデザインした部品でオリジナルの建物を作りたがり、それをデザインコンセプトとして宣伝したがります。そのためささいな部品でさえも互換性がなく、建設した会社に頼まないと修理できない、ということがよくあります。これをクローズドシステムと言います。プレハブ会社としては自分流のデザインや寸法で作れるし、価格や品質も独自に設定できるので便利です。ですのでこのクローズドシステムは多く取り入れられています。

 

その一方、建てた後の手入れやリフォームになると、部品1個が手に入らず、わざわざ住宅メーカーに問い合わせ、見に来てもらい、注文し、工事をしてもらわないといけません。つまり、修理やリフォームが厄介なのです。もちろん住宅メーカーにしてみれば、完成後のアフターでも収入があるので一石二鳥ですが、住まい手にとっては迷惑な事も起こります。ホームセンターで買ってきて自分でチョコチョコっと直そうと思っても、それが出来ないのですから。しかも、将来大きなリフォームをしたくても、また新築時の住宅メーカーに頼まなくてはなりません。

 

量産と品質という生産者側の立場では、クローズドは便利です。ですが、ストックやリフォームという住み手の側からすると、オープンの方が助かります。私は住宅メーカーにいたときから、この問題に悩んでいました。

今は住宅メーカーを退社し、一般の建築をやっています。またリノベーションや住宅のストックについての研究者でもあります。その立場からすると、部材は出来るだけオープンであるべき、という考えを持っています。クローズドによる抱え込みは、やはり生産者側だけの都合です。

 

当時の電話の方は、結局どうしたのか、私は知りません。でも、きっと憮然とし、納得いかなかったのではと思います。

もう時効ですが、すいませんでした。でもそれが企業側の思想なのです。