園田邸

園田邸の外観  右側は増築部分です
園田邸の外観  右側は増築部分です

昭和30年、1955年に建てられた木造住宅を見に行ってきました。自由が丘駅の側、閑静な住宅街の一角にある園田邸という、建築家の吉村順三が設計した住宅です。1955年の完成ですから、既に58年が経過しています。でも、つい最近までピアニストのご本人は住んでいましたし、現在は他の方が購入していますが、やはり住み続けています。

 

小さな木造住宅です。1階のほとんどはピアノの練習室兼居間で、制作した薪を燃やす暖炉があり、大きな吹抜になっています。2階は寝室と書斎のみ、当時26才だった夫婦にとっては、大変住み心地の良い小住宅だったでしょう。今見ても、いかにも心地の良い室内で、落ち着きます。

 

木造の築58年ですから、相当にガタピシ、と思うかもしれません。でも、全くガタは来ていません。私は多くの古い建築家の設計した住宅を見てきましたが、どれもしっかりとしていて、歴史が身体を覆い包んでくれて、温かみを感じます。

今回の園田邸も、床も建具もしっかりしていて、窓は全て木製ですが、ピッタリと閉じています。当時の作りです。雨戸、網戸、ガラス戸、障子の順に建て付けてあり、その全てが壁の中に引き込まれるようになっているので、壁もその分厚くできています。屋根はアルミの板金で、深い軒があり、漆喰と杉板の下見貼りの外壁はほとんど傷んでいません。というか、恐らくメンテナンスをしっかりしてきたのだと思います。キシミひとつ出ない階段、機能的な台所、2階の寝室の室内窓からは、1階の居間が見下ろせます。

 

建材は杉やラワン材ばかりで、高級な素材は使われていませんでした。当時26才の施主にはそんな財力もなかったでしょう。なのに何故あんなにもしっかりとしているのでしょう。基礎工事が普通以上にしっかりしていた事もありますが、やはり大工の工事全体がきちんとしていたのでしょう。大建築家、吉村順三の設計です。半端な仕事はできません。その技が、58年という時を忘れさせていると思います。

そして何よりも、この家を愛していた園田さんのお手入れがあった事が大きいと思います。大事に使えば長持ちする、と言うあたりまえの事が成されていたのでしょう。

 

現在は増築部分を含めて小さな音楽室として借りることができます。まだまだ長生きしそうな木造住宅でした。