兵庫県西宮の西宮神社の築地塀  美しい塀として有名です
兵庫県西宮の西宮神社の築地塀  美しい塀として有名です

塀というのは、日本のどこでも見ることが出来ます。ブロック塀であったり万年塀であったり、中には昔ながらの土塀もあったりします。現代では塀よりも生け垣やフェンスを用いる住宅が増えてきていますが、いずれにしろなにがしかの境界は設置することが多いようです。

 

塀は、英語では wall になります。wall だと壁ですね。日本語では壁と塀は全く違いますが、英語では一緒のようです。例えば、有名なベルリンの壁。あれは日本流では塀ですが、The Berlin wall と表現されていて、日本語訳もそのまま壁になってしまいました。こうした混乱は、英文を読んでいると多いです。例えば、stone wall と表記されていたら、石の壁なのか石垣なのか、それは文章から判断するしかありません。城を囲む城壁にはrampart という単語があり、wall とは区別されています。と言うことは、言語から判断すると、塀そのものが少なかったのだと思います。塀を作るのはお城の城壁や、町全体をぐるりと取り囲む塁壁だったのでしょう。

 

一方の日本では、塀に関わる言語は多数あります。歴史的には、土塀、垣、築地(ついじ)などが代表的で、多くは武家や寺社の境界に使われていました。一般の民家や農家では、個人レベルでは敷地の境界を取り囲む事は無かったようです。江戸時代後期になり、大きな商人が邸宅を建てると武家屋敷のように塀を建て始めました。武家屋敷は戦争対策ですが、商人屋敷は泥棒対策でしょう。

やがて、個人の敷地に対する所有権の明示が重要になり、個人宅でも垣が建ち始め、戦後は安価なブロック塀が主流となって現代にまで至っています。大正から昭和初期の小説を読むと、よくお屋敷町の長い塀が出てきます。特に江戸川乱歩の小説では、そんなお屋敷の薄暗い通りに怪人20面相が出てきています。

 

一方、世田谷区の成城学園という町には、塀がありません。これは町の住民が条例を作り、塀を禁止したためです。生け垣はあります。でもブロックやコンクリートなどの塀は全くありません。そのため、とても美しい緑豊かな街並みができています。しかも開放的でもあります。欧米の住宅街にも塀はありません。道路に面したfront yard は自分の敷地ですが、公共の為の空間です。街並みを確保するために、勝手に塀などは作れません。なのでとても開放的で広々とした芝生が広がっています。それが決まりなのです。

 

塀のある街並みはあまりいい感じがしません。閉鎖的で排他的です。防犯にはかえって開放した方が良い、という指針も出ています。生け垣かフェンス程度が、やはり個人住宅の境界には適していると思います。