築地市場

築地の場外市場  この雑踏と混み具合、ゴミゴミ感が魅了です
築地の場外市場  この雑踏と混み具合、ゴミゴミ感が魅了です

文化と言うのは、長く伝承されて始めて熟成され、公に認められるもので、熟成されるまでにはそれ相応の年月がかかるものです。また、作ろうとして作れるものではなく、人間の生活や営み、社会基盤、政治情勢、環境などなど、様々な背景が文化の方向性を決めて行きます。それは、住宅が設計者の意図通りには使われないで、住む人によって使われ方が違ってくるのと似ています。人が意図するものとは全く異なった姿にたどり着くのが、文化の重要な部分です。

日本から、また一つ大切な文化が消えようとしています。築地の魚河岸と場外市場が、2年後に移転する計画が具体的になり、移転後の設計計画が明らかになりました。近代的で、清潔で、整理整頓された複合施設かファッションビルかといった感じです。少なくとも、現在の築地の雑踏と活気と人同士の触れあいを全く感じさせない、大型ショッピングセンターの登場です。

 

現在の築地ではきっとなにがしかの問題があるのでしょう。なので移転するのでしょうが、何故そこまで文化を否定してしまうのかが疑問です。設計者は大きな組織で作られていると思いますが、自分の名前を後世に残したいだけなのでしょうか。国立競技場の決定も同じですが、何故か日本人は日本独自の文化を恥ずかしがり、近代化、欧米化させることを正義と感じている雰囲気があります。まだまだ明治維新の、そして戦後の感覚を引きずっているとしか言いようがない感じです。

 

現在の築地には、観光客が大勢来るそうです。実際留学生達も、タクシーを使いながら、早朝の魚河岸を見に行ったり、場外を歩き回って写真を撮り、寿司を食べて満足気に戻ってきます。でも、現在の築地に行くのは、寿司を食べに行くのが目的ではありません。市場全体の、あのゴミゴミと混み合った路地が素敵で、寿司屋ののれんが日本情緒にあふれているから行くのです。それが新しい建物になったら、きっと行く人はいなくなるでしょう。ただの、レストラン街で、土産物屋にすぎませんから。

 

誰が先頭に立っているかは知りませんが、その人には、日本よりも遙かに長く文化を伝承し、保存し続けているヨーロッパにもっと学んで欲しいと思います。一度失われると、二度と文化は戻ってきませんから。