平屋の家庭

磯野家の間取り  
磯野家の間取り  

平屋の住宅なんて、現代ではかなりの贅沢かもしれません。それなりの土地がないと建物の広さが確保できないし、陽当たりも取れません。加えて、積雪の影響もなく、洪水の心配もないなど、色々な条件が整わないと成立し難い住宅です。

と言いつつも、実はつい最近、主に戦前まではほとんどの住宅が平屋で、2階建ては一部のお金持ちでしか作れなかった家です。そう考えると、平屋というのは日本の伝統的な住宅の姿である、とも言えるほどに一般的でした。

 

その平屋と2階建て、家族のあり方や生活などに、どの様な影響を与えているのでしょう。

例えばサザエさんを例にして考えてみましょう。あの家は平面図まで公開されていますが、ご存じのように平屋です。磯野家の4人家族と、フグ田家の3人家族の合わせて7人が平屋に住んでいます。誰しもが感じるように、かつおとわかめの日常は常にサザエや両親の生活と重なっています。タラちゃんもいつもかつおやわかめと一緒に遊んでいるし、そこにサザエやお父さんの声が聞こえてきます。「こらー、かつお!」というお父さんの大声は、家の何処にいてもかつおの耳に届くことでしょう。

 

もし磯野家が2階建てだったら、あの物語はもっと難しくなり、磯野家両親、子供達、フグ田家の各グループがもっと分散した場面展開をすることになったはずです。かつおとわかめが2階の自分達の部屋にいて、両親は1階の居間にいる。サザエ達フグ田家も2階の片隅、となると、登場人物同士の接点がいっぺんに減ってしまいます。きっと、全く物語など発生しない普通の家族となってしまうでしょう。平屋で生活圏が重なり合っているからこそ生まれるドラマなのです。

 

住宅の間取りは家族の生活スタイルまで決定してしまう力を持っています。現代人の家族の姿は、1960年代に始まったアメリカ風住宅の模倣が起源となっています。そして、現代へと引き継がれています。

歴史は変えられないし、今更戻ることも出来ないけど、でもサザエさんの家族のあり方は、何処かで日本人のDNAに触れているのだと思います。