Shukhov Tower

Shukhov Tower
Shukhov Tower

日本人のほとんどの人が見たことも聞いたこともないタワーでしょう。ロシアのモスクワに1922年に建てられた高さ160mの電波塔で、言わば、モスクワの東京タワーみたいなものです。何でこんな構造物が成立するの?って聞きたくなるような、蜘蛛の巣状の網を張り巡らせただけのタワーですが、地震も台風もない国ならではの表現でしょう。尤も、網と言っても、一本の鉄は人間の腕ほどの太さはありますが。

このタワーが、解体の危機に立っているとのことで、今その保存に向けて運動が起こっているそうです。

 

2014年にNew York Times が情報を得てレポートし、その後イギリスの著名な建築家、Norman Foster を始めとして、各国の建築家、技術者、大学関係者、文化人等が署名をし、プーチン大統領に嘆願書を提出したそうです。曰く "a beacon and symbol of progressive, forward-looking civilization" 「進歩と先進的な文明の、象徴であり指標でもある」、という内容です。ユネスコの世界遺産にも推薦したいとも書き添えていますし、実際、解体の危機にある建物として、ユネスコも注目しているそうです。

 

1922年と言えば、世界中に近代建築の旋風が巻き起こり、当時の建築家達はこぞって、新しい建築の表現を模索していた時代です。特にそれまでの石に変わって鉄やガラスを使った表現は先進的で、多くの建築に応用され、ガラス張りの鉄骨高層ビルなどが建ち始めた時代でもあります。この電波塔も、そうした時代のまさに「象徴」のような建築であることに間違いはありません。日本では有り得ない構造ですが、是非ともやってみたい表現でもあります。

 

日本でも、1951年に建っ、た鎌倉の鶴岡八幡宮の敷地内に建っている近代美術館が、やはり解体の危機に立っています。神社側が敷地の返還を求めているからです。

建築は、芸術性も高いですが、機能、用途、資産、運用など、様々な現実的な側面も持っているため、保存には相当なエネルギーを使います。でも、多くがその資産運用の名の下に解体されています。DOCOMOMO やUNESCO 等が努力をしていますが、この資産価値には敵わないことが多いです。

このモスクワの”蜘蛛の巣”電波塔は、はたしてどんな結末になるのでしょうか。気になります。