窓からの景色

壁画ではありません  フランス式の生け垣の上空写真です
壁画ではありません  フランス式の生け垣の上空写真です

北九州に住み始めて気付いたことに、窓からの景色の違いがあります。アパートの2階からの眺めもありますが、研究室のある4階からの眺めは、東京や横浜とは別世界です。つまり、遠くが見えるのです。

 

東京も横浜も、周囲には高層や超高層のビルやマンションが立ち並んでいるため、例え学校の4階に登っても、回りを見渡すことはできませんでした。必ず近場の建物に遮られてしまいます。つまり、窓からの眺めは、近所の建物です。でも、ここ北九州の窓からの眺めは、遠くの山並みまで見渡すことが出来ます。遠くの所々に、ニョキニョキと高い建物が飛び出していますが、斯界を遮ることはありません。高いところに登れば、回りを見渡せる、という当り前の事が、ここにはあるのです。

 

部屋に居ながらにして庭を眺めたり、遠くの山並みを見渡したり、というのは、日本建築の居室の設計では、古くから使われていた手法です。いわゆる借景と言われる手法ですが、自然や周囲の環境と同化する日本建築の真髄です。

庭造りは、ヨーロッパでも古くから行われていて、イングリッシュガーデンやフレンチガーデンは特に有名です。でも、どの庭も、かなり人工的な匂いがします。特にフレンチガーデンは完全に人工的な庭で、植え込みを刈り込んで様々な造形を造り上げています。一見すると植物とは思えない細工も多く見られます。その意味ではイングリッシュガーデンはもっと自然な感じですが、日本の造園技術と比較すると、やはり人工的な匂いは強くなります。

 

日本の造園ももちろん人工的です。池の水は遠くの川からわざわざ引いてきたり、植木や小山、橋など、全て作ったり移植してきたもので、枝も美しく見えるように刈り込みます。でも、そうやって苦労して、いかにもそこに100年も前からあったように見せるのが、日本式の庭園です。そんな庭を、家の座敷や縁側から眺めて楽しむのが、日本式設計の真骨頂です。その時、綺麗に設えられた庭園の向こうには、本当の山並みや樹木が見えていたわけです。その山並みを美しく見せるためにも、庭の植木は剪定されています。

 

窓からの眺めは、都会では贅沢なものです。ほとんど手に入れることはできません。

そんな窓からの眺めが綺麗な環境に来れただけでも、幸せなのかもしれません。